映画「検察側の罪人」を見ました。
木村拓哉×二宮和也ということで、これは見逃せない!とかなり期待して見たのですが…なんというか、感想を言うのが難しいというのが感想でした(笑)。
キャストは豪華で実力派揃いでしたので、各場面場面の熱演、怪演はとても心に残りましたし、凄いものを見たな〜と思えるのですが、ストーリーが…。
※以下、ネタバレしています。
感想を思いつくままに…
極上の演技対決を見た!
この映画を見て良かったな、と思う一番の理由はこれです。
役者同士の丁々発止のやり取り、こちらも固唾を飲んで画面に食い入るように見てしまう、そんな映画でした。
もちろん役としての演技なんですが、役者さんとしても心から楽しみながら、相手役を完全に信頼して、緩急も楽しみつつ、全力で仕掛け合っているようにも見えました。
何だか一流の試合でも見ているような…。
全編通して、皆さん迫真の演技だったのですが、やっぱり特に印象に残っているのは沖野と諏訪部の取り調べ、そして何と言っても沖野と松倉の取り調べでした。
役柄同士としての駆け引きもありつつ、同時に役者同士としての駆け引きも滲み出ているようで、本当に見応えがありました。
諏訪部のキャラクター
ブローカーってよくある役どころで、王道のカラーってあるように思うのですが、今回の諏訪部のキャラクター造形はそういうところにも収まらず、すごく印象に残っています。
何でもやる雰囲気はありつつ、でもあまりゲスな感じを表面に出さず…。
新鮮でした。
諏訪部が好んで(?)使っていた「ポチ」という言葉のチョイスも、とても印象に残っています。
橘のキャラクター
キャラクター説明としては「沖野の担当事務官」という、一見それほど重要には感じられない役どころだけど、吉高さんが演じられるということで、何かあるんだろうと思っていましたが、やっぱり裏の事情があったところ、奥行きがあって面白かったです。
沖野を誘うところも、一見、年頃の男女の自然な流れにも見えつつも、どこか、これすらも何か裏の思惑があるんじゃないか、なんて勘ぐってしまいます(笑)
そこのところははっきりせず仕舞いでしたね。
でも勝手なイメージだけど、しばらくしたら沖野の前から姿を消しそう。
セリフが早口で情報量が多い→ついていくのが大変!
多分、あの会話のスピードややり取りはリアルなんでしょうね。
ただ、”当事者”にとっては前後がわかってて喋ってるのでそれが当たり前なのかもしれませんが、いきなりその場面をパッと見せられる観客のこちらとしては、全部を把握することができないくらい大変でした…。
「リアルを見せる」ということに特化して「(観客に)伝える」という思いはあまりないような…。
え、私だけ?(笑)
※対照的に、さっきチラッと目にしたテレビの刑事ドラマの、まぁ〜把握しやすいこと(笑)
登場人物が多くて、ちょっと”ちらかってる”印象
特に後半、いろんな人が出てくる割には、それぞれの情報が少ないような気がしました。
あんまり特徴が頭に残ってないから、次に出てきた時でも「え〜っと、この人誰だっけ?」みたいになってしまう…。
最上の奥さんと連れ子の娘は結構出演シーンがありましたけど、結局、だから何だったんだろうって感じで。
(最上の一面として、家庭がうまく噛み合っていないみたいなことを表したかったのかな?正直それは、あんまり必要ないような…)
それだったら、もっと弓岡(老夫婦殺しの真犯人)とか、小田島(松倉の国選弁護人)とか、白川(大物弁護士)なんかについてをもうちょっと詳しく描いて欲しかったなと思いました。
最上をあれほどまでに駆り立てる動機がイマイチ共感できない
あれ?これ、一番言っちゃいけないことなのかな?(笑)
久住由季を殺されて、その犯人を法で裁くことができなかったことがどうしても許せないという心情は理解できるんだけど、だからといって「別件逮捕」したり、真犯人(弓岡)を殺したり、捜査を捻じ曲げたりと、そこまでするほどの気持ちだったんだ…っていうのが、見ていて意外に思えてしまうのでした。
由季は最上に一番懐いてた、なんて丹野に言われてた(ような気がする)けど(記憶違いだったらごめんなさい)別に恋人だった訳でもないみたいだし、ただ親しかった人の無念を晴らす為に、普通ここまでするかな〜?って思えてしまったんですよね…。
まあ、松倉(老夫婦殺しの容疑者で久住由季殺しの犯人)は、人間の嫌悪感というものをマックスに引き出させるほどのキャラクターではありましたけどね。
(ほんとにすごい怪演でした)
あと、何だか「誕生日」にこだわる人という設定でしたが、何だかそれもちょっと…?
由季と沖野の誕生日が同じで、だから何!?ってどうしても思っちゃうんですよね(笑)
急に終わった…みたいな印象
松倉も死に(不慮の事故扱い?)、別荘で最上と沖野が対峙し決別、そして建物を出る沖野と、足早に2階に上がり沖野を見送る(何かする気?)最上。
そして沖野の叫び。
「おぉ…」と固唾を飲んで見守っていたら…エンドロール。
え!?終わりですか?(笑)
ま、確かに松倉は死んでしまったけど。
何だかいろんな人の思惑が、成功したり、失敗したりでごちゃ混ぜになって、容疑者は死ぬし(最上が殺してるけど)、未解決事件の真犯人も消されるし(あれは諏訪部の独断?)で、もうすることといえば、後処理しかないんでしょうけど…。
あっ、世間的にはもう一人の容疑者(弓岡)は失踪してる認識なのか…。でもすぐに見つかりそう。
まあ、それにしても、終始疾走感のある運びだっただけに、唐突にカットアウトされた感がありました。
あっ今思い出したけど、丹野に託された収賄事件の証拠、あれどうなったんだろう?
結局この話って殺人事件と収賄事件の二本柱だったってことでしょうか?
何だかちょっと”ちらかってる”ような…。
それとも、全編通して”ちょっとずつ聞き漏らしてる”ことが影響して、話についていけてないのか…。
う〜ん…。
最終的な感想
演技として、凄いものを見た!って印象はありますが、一つの作品として、というか物語の切り取り方として「何でこの部分を切り取って一つの作品としたんだろう」なんて思ってしまいました。
終わった…の?みたいな。
一つ一つのエピソードとか、登場人物の心の動きとか、実力派役者陣とその迫真の演技とか、質の良いピースが揃ってるのに、それがバラバラのままという印象で。
上演時間もそこそこ長かったのに(短く感じましたけど)、最終的に「それで…え?」という印象。
見終わって最初に出た言葉が「これ、どう思えばいいの?」でした。
タイトルの意味は何となく納得ですけどね…。
(というか、タイトルがネタバレみたいな感じ)
「正義とは何か」を問いかける映画という触れ込みのようでしたけど、それ自体は元々永遠に答えの出ないテーマだから、その点について新たに思うことはなかったです。
う〜ん、なるほどこういう映画なんですね〜。
2回見るか、もしくは原作を読んだら変わるのかな?
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