YouTube「唐阁影院 Tag Theatre」チャンネルにて中国映画「河神・詭水怪談River God Water Strange Story」(2023)を見終わりました。
上映時間:91min.
(ビジュアル、その他情報はこちら→百度百科)
民国期の天津を舞台にした、河にまつわる怪談・奇談を題材にした作品です。
ドラマ「河神-Tianjin Mystic-」、「河神Ⅱ-Tianjin Mystic-」と、同じ小説「河神・詭水怪談」を原作として製作された映画で、さらに本作は原作者の天下霸唱氏が”劇本顧問”(脚本監修?※)として製作に参加されているため、その点でも興味津々でした。
※エンドクレジットには”劇本顧問 Script Supervisor/天下霸唱”と表記されており、”劇本顧問”は”脚本コンサルタント”と翻訳され、”Script Supervisor”は”撮影記録係”の意味のようですが、まさか原作者が記録をされるとは思えませんし(ちなみにスクリプターは”場記”だそう)、脚本監修的な意味だと解釈しました。
私がドラマ版を初めて見たのがちょうど真夏で、しかも河川が多い天津を舞台にした”水にまつわるファンタジースリラー”といったような作品だったので、私の中で「夏にピッタリ」というイメージが定着していて、それ以降夏になると「ああ、「河神」見たいな」と思うようになったのですが、ここ最近もそんな感じでYouTubeで「河神」を見ていたらおすすめに上がってきたのがこちらの映画版でした。2023年、昨年の作品とのこと。
私はドラマ版にハマったのですが、映画版のこちらもこれはこれで良いな、と思いました。そして、読んだことはないのですがおそらく本作の方が原作により近いのかなと。
主なキャスト
郭得友(水上警察 伍河撈屍隊隊長。泳ぎが極めて上手く、水難事故の捜索・救助の数々の実績から”河神”と呼ばれる):謝苗
李大楞(郭得友、丁卯と兄弟分の生臭坊主):衣雲鶴
劉芳(図書館司書):張新童
丁卯(水上警察 伍河撈屍隊隊員。郭得友の弟弟子):林楓烨
魚四(密漁漁師):劉雪濤
連化清(邪教「魔古道」教祖の後継者。「河妖」の転生と言われ、冷酷で重瞳の人物):王蘊凡
呉老顕(郭得友、丁卯の師叔。薬飴を売って生計を立てている。捕吏だった頃、妖怪と戦って重傷を負い脚が不自由になった):王双宝
※李大楞は作品中、普段何をしている人物なのか、詳しい描写はありませんでしたが、原作小説の百度では「一日中まともな仕事をせずイカサマを生業にするニセ坊主」的な散々な人物評でした(ほんとにあってるのかな?w)。それでも郭得友、丁卯と兄弟分であることは間違いないようです。上記は本作の百度百科のあらすじを参考にしました。ちなみにこの人、ドラマ版では存在しないキャラでした。
印象に残ったところ
原作を知らないので、どうしてもドラマ版と比較して見てしまうのですが…でもこれはこれで良い!
よくできた作品という印象
ツッコミどころってないような気がします。
もうちょっと具体的に挙げますと…
《ストーリー展開・エピソードの構成》
原作は知りませんが、原作者が製作に参加している以上、ドラマ版よりは本作の方がより原作者の意図が強く反映されていると思うのですが(それでも映画という限られた尺での表現という点では多くは盛り込めないでしょうが)、怪しい事件も途中色々な様相を見せながらも最終的には解決していますし、見終わった後のスッキリ感というか腑に落ちた感は本作で感じることができました。
ドラマ版ではまだまだ謎が多いんですよね。まあ続編の可能性があるからでしょうが。
《ビジュアル・美術》
民国期という時代背景の表現、またその中で恐ろしい姿をした妖怪も色々出てくるのですが(幻想・幻視なのですが)、そういったものも含めて特殊効果、美術面も精緻で見応えがありました。妖怪の他、水死体や塩漬けの死体(ぎゃー)なども登場するのですが、そんな目を背けたくなるようなビジュアルのものもとてもリアルでした。
また、怪しげな奇術を見せる移動遊園地のようなシーンもあるのですが、レトロでチープで怪しげな感じがよく表現されていて、画面に引き込まれました。
なんとなく江戸川乱歩作品の世界観に通じるものを感じてすごく印象に残りました。(昔ハマったんですよね)
また、キャスト陣も私は知らない俳優さんばかりだったのですが、キャラによくハマっていてすんなり作品世界を楽しめました。
ドラマで言及されなかった点が描かれていることも
魔古道の始まり(多数の子供を攫ってきてその命を奪い、長生きするという邪法の本が起源)、連化清の経歴、郭得友の兄貴分(郭大哥)がどうして亡くなったのか、郭淳の弟弟子(呉老顕)の存在など(本作では郭淳は故人?)、ドラマ版ではふわっとしていた部分を見ることができて、満足感がありました。
ドラマ版との比較など
ま、結局これに尽きるのですが…
キャラクター設定の違い
これが一番びっくりしました。
主役の郭得友、ラスボス連化清以外はかなり違っていて、衝撃でした。(もちろんこの二人も多少の違いはありますが)
丁卯:《ドラマ版》男二。天津を仕切っている水運業・漕運商会の御曹司。ドイツ留学帰りで法医学を修めている。父親の変死事件の捜査の成り行き上、臨時警察官となり、さらに郭得友の師匠に弟子入りしたため形式上の弟弟子になるが関係性は対等。→《映画版》メインキャラの内の一人。水上警察 伍河撈屍隊隊員で郭得友の弟弟子。
魚四:《ドラマ版》漕運商会の護衛(幹部級)。豪快で剛腕。商会に対する忠誠心が強い。→《映画版》密漁漁師。臆病者で小物。
白四虎:《ドラマ版》絵師。妹の復讐のため学園の職員として潜入し密かに犯罪に手を染めている。自覚無しに”九牛二虎一鶏事件”に加担している。→《映画版》肉屋(屠殺業者)。亡くなった妻子にたとえ幻覚(魔古道で使う、心魔が幻視できる薬によるもの)であっても会いたいがため、連化清の手先として悪事を働いている。
そのほか、映画版ではメインキャラの李大楞(原作では郭得友、丁卯と3人で鉄三角:ゴールデンコンビ、のようです)はドラマ版では存在しませんし、郭得友、丁卯のそれぞれの恋人的存在(顧影、肖蘭蘭)も映画では登場しませんでした。強いていえば、ヒロイン的なポストは図書館司書の劉芳でしょうか。
キーワードは同じながらも構成の違いで違ったストーリー展開に
撈屍隊(水死処理隊)隊長である郭得友による母子の水死体の発見から始まり、魔古道が仕掛けた爆弾による洪水、河を鎮める”九牛二虎一鶏”という術といった、エッセンス(キーワード?)は本作でも同じくあるものの、全然違うストーリーで面白かったです。
本作が原作寄りなら、逆にドラマ版はこれらのエッセンスをしっかり散りばめながら、さらに話を大きく膨らませて、よく出来た構成だと改めて思いました。
ドラマ版は原作からかなり改変があったというコメントをどこかで見かけたのですが、比べてみると、ドラマ版はよりエンタメ性が上がっていて華やかさが増している印象(キャラ設定・キャスティングや華やか・コミカルなシーンを増やしていることによって)で、映画版は綺麗なシーンはほぼなくて質素な庶民の生活や、闇の部分のおどろおどろしかったり、グロテスクな描写がメインな印象が強いです。でも全体として重い作品という印象はないし、こちらの方が原作寄りなんだろうなぁというのは、なんとなく納得できます。
そして内容的にはドラマ版は謎が複雑で現時点で全てが明らかになったわけではない状態で、映画版では謎がスッキリ解決した状態という感じで(もちろん、続編の可能性を残したい(?)ドラマ版とは違うのは当然ですが)。
でもどっちもそれぞれに良い仕上がりだと思いました。
(ただ、最初に見たのが映画版だったら、ここまでハマらなかったかもしれないとは思っています。ドラマ版の”不気味さ+謎の複雑さ+オシャレさ+レトロなエモさ+コミカルさ+キャストの華やかさ”が一体となった全体の匙加減が絶妙に私のツボにハマったので)
そのほかピンポイント
○ドラマ版より天津語が多く聞けた気がします。逆にドラマ版って付隊長くらいじゃなかったかと思うのですが。
また、動画のコメント欄で知ったのですが、本作に登場した大馬猴という妖怪?怪物?(連化清の変身したもの)は天津の言い伝えに実際あるものらしいです。結構グロテスクでした…。→《ちょっと調べてみました》中国北部の方には、子供が言うことを聞かない時に大馬猴に捕まって食べられるぞと大人に脅かされるような風習(?)的なものがあるらしいです。”なまはげ”みたいな感じかな?
○ドラマ版のOSTやエンディング曲も良かったのですが、本作のエンディング曲(ズバリタイトルも「河神」!)も良かったです。テイストがドラマ版と方向性が近いように感じて、やっぱり「河神」の世界観にロックって合うんだなと再認識しました。
まとめ
いやぁ、内容も面白かったし、ドラマ版との比較という経験も面白かったです。
今まで同じ題材でドラマと映画が存在する作品というのは「盗墓筆記」シリーズしか見たことがなかったので、また他にもこういったものに出会えるといいなと思いました。
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