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【中国ドラマ】「清越坊の女たち~当家主母~」感想:女性に人権のない封建社会の中で、力強く自分らしく生きる道を模索する女性たちの物語

中国ドラマ

BS11にて放送されていた中国ドラマ「清越坊の女たち~当家主母~」を見終わりました。
全35話。
原題「当家主母」(2021)(ビジュアル・その他情報はこちら→百度百科

清朝の美しい美術と恋愛ものでは”ない”という点で見てみることにしました。
期待通り、落ち着いた色調の美術・衣装は美しかったですし、厳しい封建社会の中で虐げられながらもなんとか生きる道を模索する女性たちの姿がしみじみと描かれていて、考えさせられることも多く見応えのある作品でした。

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主なキャスト

沈翠喜家当主夫人で織物工房清越坊を切り盛りする女主人。緙絲の技術は並ぶ者がなく、経営能力にも長けている):蔣勤勤

曽宝琴家当主任雪堂の幼馴染で妾。元々知府の令嬢であったが父親が罪を犯したことにより行院楽戸に身を落としていたところ任雪堂に身請けされた):楊蓉

林舒芳沈翠喜の腹心ともいうべき側付きの侍女。清越坊の大番頭):張慧雯

任雪堂家当主だが清越坊の商売には関わっておらず、科挙試験に専念している。挙人):徐海喬

魏良弓(詩詞書画で有名な江南の才子。生母を死に至らせた嫡母に名誉を与えないため科挙を受験しないと決意している):茅子俊

任如風家二爺):李逸男

曹文彬(蘇州知府):張塁

李照(蘇州織造。師妹である曽宝琴を密かに想っている):王雨

印象に残ったところ

落ち着いた色調のビジュアルが美しい

タイトル通りなのですが、落ち着いた色調の美術・衣装が美しく目の保養になりました。

弁髪でお馴染み(?)の清朝時代のドラマは宮廷ものしか見たことがなかったので、この時代の庶民の生活を描いているという点で私的には新鮮に楽しめました。

女性はあまり体のラインを拾わない(というか、ずんぐりして見える)スタイルの服装ですが、見慣れれば、そのスタイルなりの細かなこだわりなどが表されていて興味深かったです。
女性の髪型や髪飾りも独特でじっくり見入ってしまいました。

この作品は織物が題材になっていますが、それら織物の作品もとても繊細で美しく見応えがありました。

心理描写が細やかで引き込まれる

決して華やかな見栄えのする作品ではないですが、人間の簡単には言い表せないような微妙な感情が丁寧に描き出されていて、そういうやりとりが見ていて引き込まれました。
こういう作品って黙って相手の目を見つめるシーンが多いような気がします。セリフの行間にある空気が趣深いと思いました。

脇役の人たちにも人生の様々な葛藤などが見て取れるエピソードがあって共感を呼びましたが、なんといっても沈翠喜曽宝琴の二人の対立、駆け引き、やり取りから最終的には知己とも言えるほどの間柄になる過程が繊細な心理描写によって表現されているところに引き込まれました。
二人とも頭が良く、誇り高く、心根が優しいのに、ただ立場の違いから互いに”生きるため”激しく対立していたのだ、と。

沈翠喜役の蔣勤勤さん、私は初めて見ましたが本当に沈翠喜と言うキャラクターを見事に体現されていましたし、曽宝琴役の楊蓉さんは以前に現代ドラマのちょっと騒がしい役しか見たことがなかったのですが(「沙海」:梁湾)、本作ではまたガラッと違ったキャラクターをこれまた見事に体現されていて良かったです。

男性陣の不甲斐なさと非道さが強調されたキャラ設計

女性キャラクターの賢さ、逞しさ、粘り強さ、寛容さが目立つ一方で、男性キャラクターは軒並み頼りなく、決断力に欠け、ナイーブすぎだったり逆に傲慢で自己中心的といった対照的な描かれ方をされているのが印象に残りました。

沈翠喜曽宝琴の激しい対立や苦悩の原因である任雪堂も男尊女卑の時代においては、まだ女性に寄り添っているほうとはいえ、沈翠喜に決定的な自立する決心をさせるような心無い申し出をするあたり、本当に「女性も男性と同じ人間」という概念自体がそもそもないのだな、と感じました。腹立たしいを通り越して不思議な感覚。
男性があまりにもひどいと言うよりは、社会全体がそういう概念で作られていた、ということなんでしょうか。女性は虐げられる本人ですから中には違和感を持つ人もいるでしょうが、男性にとってはその違和感など想像もつかない感覚、考えということだったんでしょうね。

夫人もあまりにも「婦道」が身に染み付いた人物で、知己である沈翠喜の危機に助けるどころか「せめて尊厳ある最期を」と立派な棺桶を用意するほどだったのが、官妓に身を落とした娘の境遇には流石に「婦道」云々など言っておられず夫に対抗し無理心中に至ったのも印象的でした。

そんな女性陣が苦労している世界観の中で曽宝琴の侍女が”如意”と言う名前で、名前の通り「意の如く」人生を生きているのも面白いなと思いました。

ちょっとだけ引っかかったこと…

夫の心は曽宝琴にあることを承知した上での結婚だったため、愛されるということを知らずに生きてきた沈翠喜が出会った魏良弓という男性。
夫の失踪後、束の間互いに愛し愛される美しく儚いエピソードではあるのですが、この二人、残念ながら見ていてどうにもしっくりきませんでした…。
というか、ともすれば”親子”にも見えてしまって…(汗)

沈翠喜役の蔣勤勤さんも美しいし別に老けているわけでもない。けど沈翠喜の落ち着きと冷静さ(もしかしたら声かな?)が魏良弓茅子俊さん)の青年感とどうにも釣り合わないように感じてしまいました。
実際演じられたご本人同士では10歳ほど差があるようですが(夫役の徐海喬さんも同じく)、キャラクター的にもそういう設定なのか、役的には同年代という設定なのか…。
魏良弓の声が、彼が病弱という設定もあるからか、かなり低めに掠れ気味に出しているように聞こえたのですが、沈翠喜とのバランスでそうしているのかとも穿ってしまうほど。
そこがわからないので、どう見ればいいのかちょっと戸惑ってしまいました。

また、沈翠喜から魏良弓へ好意を持つのは、見ていてなんとなく共感できるものの、魏良弓から沈翠喜へ好意を持つ過程というかきっかけが思い当たらず、強いて言えば”同情”くらいしかなさそうに見えてしまうんですよね(ただ、そうではないようですが)。(もしかして二人で船を出して巷の悪口を聞きに行った時に沈翠喜の振り切った姿を見て?あれだけで??)

BS11のテレビ放送は多少のカットがあったらしいので、もしかしたらカットされたのかもしれませんが、このバージョンではちょっと「ん?」という感じが否めませんでした。

全体的なストーリー展開が自然ですんなり腑に落ちるだけに、このポイントだけどうしても引っかかってしまうのが残念でした。
沈翠喜にもそういうエピソードがあったということはすごく良かったとは思うのですが。

まとめ

楽しい作品では無いし、困難に立ち向かうシーンが多かったものの、ラストには沢山の女性キャラたちが前を向いて力強く生きている様子が描かれ、希望を持てる終わり方だったので良かったなと。
またオープニング、エンディング共にしみじみとした情緒のある曲で、これも良かったです。

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